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北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会
 
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治療体験2−@
ドイツにおける不登校問題について
石狩市 心の教室相談員
鈴木ゆみ

1.はじめに
 複合化・多様化の傾向がみられると同時に、学習障害や注意欠陥/多動性障害(ADHD)との関連も指摘されている近年の日本における不登校問題は、国・教育委員会・学校を中心とした様々な取り組み・対策が講じられてはいるものの、その抜本的解決には至っていない(平成16年度の小学校・中学校の不登校数123,358名)。本研究では,産業化・近代化の程度においては近似的であるが,文化的・宗教的には異質であると考えられるドイツ連邦共和国の教育制度と不登校問題を概観し、得られる示唆から今日の日本における不登校問題解決への糸口が得られればと考えている。
2.ドイツにおける学校制度と不登校問題
@学校制度と法律
 ドイツの憲法にあたる基本法(Grundgesetz)は,第6条第2項で「子どもの養育および教育は親の自然的権利であり、何よりも親に任された義務である」と規定、自由権的な色彩が強く、ドイツの学校制度形成の基本となっている。また、ドイツの就学義務は義務を負う主体を生徒とし、国籍を問わず当該の州に居住する全ての子どもが就学の義務を負うことになる。
A就学義務違反の取り扱いについて
 就学義務中の生徒が無断欠席を繰り返す場合、これに対して学校は何らかの措置を講じることになるが教育相談のような穏やかな措置から出発して、教育・秩序措置⇒過料(Busgeld)⇒強制就学(Schulzwang)等の厳格な措置が段階を隔てて講じられる。
B不登校問題とその現状
 ドイツでは、国レベルでの不登校の統計調査は行われていないが、推定で約1.5%、約7万人(日本では平成16年度、小学校0.32%、中学校2.73%、小中合計1.14%)の不登校児童・生徒がいるとされている。ドイツの就学義務は学校に行く義務であり、基本的には学校以外で学ぶという例外を認めていない。このような厳しい就学義務法制をとりながら、日本と決定的に異なるのは、就学すべき学校が極めて多様性に富んでおり、自らに適した学校を見つける選択の幅が広いことである。ギムナジウム→実科学校→基幹学校への上位から下位校への転校が容易に可能であること、学習促進学校(学習上の障害がある子ども)と、教育援助学校(行動や情緒面で障害のある子ども)の存在がある。このような学校が通常の学校で不登校であった子どもの事実上の受け皿になっている。1998/99年度にはBW州においては学習促進校が281校が設置され、25868名が在籍している(約50人に1人、1クラスあたり11.1名)このような特別学校で指導を受けている生徒は厳密に言えば、正規の学校に通っているのであるから不登校とはいえないのである。
3.まとめと今後の課題
 ドイツの特別学校および私立学校制度がいかに柔軟であり、各学校に配置される相談教員や、学校心理相談所がその役割を果たしていても、あるいは就学義務違反がいかに厳密に施行されたとしても、7万人という推計もある不登校生徒のすべてをそこで教育することができると推測することは難しい。日本と同様、グローバリゼーション、情報革命の只中を生きるドイツの子どもの、思考や情緒・行動的側面にも大きな変化が見られるという指摘もあり、その変化に家庭や学校・社会構造が対処しきれず、制度疲労に陥っている現実が見て取れる。教育における階層性のいまだ色濃く残るドイツの現状と、戦後改革において、少なくとも制度上は民主化を大いに進めた日本との場合を直線的に結びつけて議論することはできないが、ドイツにおける不登校問題の取り組みから得られる示唆と、それを謙虚に学びとる姿勢は非常に重要であると思われる。
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