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北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会
 
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治療体験2−A
不登校症例への治療、登校までの取り組み
札幌太田病院 ○奥津妙子 小川説子 太田耕平

1.はじめに
 家庭内の機能不全は、不登校の背景の1つである。当院では、病棟内・内観療法及び家族療法により、表出された問題行動の改善のみならず、家庭機能及び登校意欲の回復に取り組んでいる。2症例を紹介し、経過について報告する。
2.症例A(10代前半、女性、不登校)
 本人が中学時に両親が離婚し、母方姓になるも経済的都合により父、母、本人の3人で同居していた。小学高学年時よりいじめられたことを理由に登校を拒否し、徐々に昼夜逆転の生活になり、不登校に至った。校長の勧めで知能検査をし(IQ70)、指導学級へ転校し、中学進学時に再度知能検査をし(IQ70)、特殊学級に入学となった。その後も欠席がちなため、某精神科を受診したが中断している。また、小学高学年時に父に叱られクッションで叩かれたことがあり、以来父と全く口を利かない状態である。不登校、不規則な生活が続いたため、母の知人の紹介で当院を受診し入院となった。
 入院1日目、母への依存、母子密着が強く、他者との関係作りが困難であった。そのため、母子分離を図り、時間をかけ、自発的発言を促しつつ内観面接を進めた。その結果、徐々に表情が和らぎ、自発的に発言するようになった。また「勉強が難しかった」「制服に着替えるのが面倒だった」と不登校時の自己を洞察し、入院4日目『学校の先生や友人にしてもらったこと』を調べ「自信はないが行ってみようと思う」と登校意欲を回復した。内観終了後、母との家族内観を行った。仕事で来院できない父は、Aへのお詫びの手紙を母に渡していた。母親がその手紙を代読したことで、父の悩み、不安を知ることができ、母子ともに抱いていた父への陰性感情を緩和する一助となった。入院6日目より病院からの登校を開始し「学校が楽しい」と笑顔で話され、生活リズムも安定したため、入院20日目で退院となった。
3.症例B(10代前半、女性、不登校)
 父のアルコール問題などがあり、小学高学年時両親が離婚し、以降母、妹、母方祖父母と同居している。中学時よりクラスに馴染めないことを理由に不登校となった。また、同時期よりガス吸引をすることがあり、幻聴などの症状が出てからは吸引をやめているとのことであった。今後の相談のため、母と共に来院し「不登校の問題に自分から向き合いたい」と治療を希望し、入院となった。病棟内・内観療法を通し「父に見捨てられたと思っていた」「離婚を機に、現実逃避から問題行動を起こしていたが、返って自分を苦しめていた」等客観的に過去を整理できた。そして「親から離れることでたくさんの大切なことに気づき、当たり前だったことがそうではなかった」と認知の変容がみられた。家族内観では、率直に自己表出し、相互的かつ積極的コミュニケーションが図られた。入院7日目には病院から登校を開始した。その後、登校及び日常内観を継続し、入院期間2週間で退院となった。退院後2ヵ月が経過した時点では、欠席がちではあるものの母との会話は増えたようであった。
4. 考察
 両例ともに不登校のきっかけは学校での交友関係であった。背景には、家庭機能不全(母子関係、父子関係、不規則な生活リズム)が考えられる。Aは過度の母子密着のための他者関係の構築が困難であり、Bは母に充分な依存ができず自己表出に欠けていた。このことは母子間の距離を適切に保持することの重大さを意味し、それが子の課題解決能力を培う一因となることを示唆している。その距離感を測る上で、入院による一時的な母子分離、自己を客観的に振り返る病棟内・内観療法は有効な手段と言えよう。家族以外の他者との関係を拡大させ、登校意欲を回復させたと考えられる。さらに、家族全体でこの治療に取り組むことで、母子のみならず夫婦間を含めた家族の基本的信頼関係の回復に寄与している。
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