北海道でのいじめ・暴力・ひきこもり治療について考える。体験発表や講演、研究報告、発表会情報
北海道いじめ・暴力・ひきこもり治療研究会
 
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治療体験1−@
長期ひきこもりへの自己像の修正・自信回復について
〜引きこもりと概日リズム障害の治療〜
札幌太田病院 急性期治療病棟
○藤本朝海・佐々木智城・太田秀造

1.はじめに
 近年、不登校・家庭内暴力といった思春期症例が増加しており、さらに長期化する引きこもりは、深刻な社会問題となっている。今回、家庭内暴力、自傷行為、自殺企図などの問題をもった長期引きこもり症例を紹介し、内観療法及び肯定的な評価によって、自己像の修正、家族関係改善、自信回復に至った治療経過について検討したい。
2. 症例紹介
 S氏、30代男性。無職、高齢の両親と同居している。兄は独立し家庭を持ち、疎遠である。中学時代に身体疾患を患い欠席が増え、高校進学後には交通事故を起こし、それを契機に通学困難となり中退している。夜間定時制高校へ再入学するが、再び中退となる。その後昼夜逆転の生活となり、乱雑にした自室への閉じこもりの生活を十数年続けていた。  家族に対しては暴言、暴力はないが、たまたま自室を覗いた父に対して陰性感情を抱くようになる。また「メール友達に裏切られた」「自分は生きていると迷惑だ」と希死念慮も出現し、家族に遺書を渡している。本人の希望で、某メンタルクリニックに通院するが、処方薬の多量服薬をしている。その後食事量の低下、自傷行為が出現し、両親から本人を入院させたいと、当院受診し即日入院となっている。
3. 治療経過
 本人が同意の上受診するが、入院は拒否し、興奮・暴力行為があり、保護室使用となった。入院後より、病棟内・内観療法を行ったところ、情緒の安定、客観的自我の獲得が見られた。その結果、入院の必要性を理解するようになった。また、内観療法終了時には「父とあまりコミュニケーションをとっていなかったことに気づいた」、「感謝の気持ちを表せるようにならないと…」など話し、父とも少しずつ会話するようになった。
 次の段階として、生活習慣の改善、対人関係の向上を目的にした援助を行ったところ、徐々に集団療法に参加し、昼夜逆転の生活が改善するなど、規則正しい生活が送れるようになり、治療効果が見られた。一方で「入院生活になじめない」、「まだ何も出来ない」など本人自身は改善した実感は得られなかったようである。そこで、不安に対して受容的な対応を心がけ、また、入院治療による変化を客観的に評価出来るよう、毎日の面接で肯定的なフィードバックを行い、S氏の自尊感情への働きかけを行った。その後気分の落ち込みを時折訴えることもあったが、集団療法へ継続参加でき、同室者との交流も増え、笑顔も見られるようになった。そして、「両親が元気なうちにしっかり働けるようになりたい」と将来の展望を述べた。
4. 考察
 S氏は中学時代の身体疾患と高校時代の事故という挫折体験から、不登校、中退と適応性を失ったのではないかと考えられる。そのため思春期から精神的成長が遂げられず、長期のひきこもりに陥ったのではないだろうか。また、社会性が身につかず、対人緊張や不安感から否定的自己像を形成し、うつ症状および自傷行為、多量服薬などの問題行動を呈したと考えられる。
 松下正明ら1)はひきこもりの症例に対して「対人関係の中の不安緊張に耳を傾け、悩みながらも生活できている状況に対して評価をするなどで、少しでもいやな体験が減らせるように援助することは入院生活における看護の役割としても重要である。」と述べている
。 病棟内・内観療法は、家族からの愛情の認識、家族を通した自己客観視、安心感の獲得などにより、自尊心回復や自己像を修正する契機になったようである。しかし、ひきこもりによる長期的な自己否定、劣等感から、早期の認知の修正には結びつかず、不安、緊張は続いていた。そこで根気強く肯定的な評価を毎朝の面接時に行い、一緒に集団療法や日常生活面での目標を考え、やりとげることで、良好な対人交流へと発展させ、さらに人生目標を獲得することが可能になったと考えられる。
今後S氏がこのような治療効果を持続させるために、デイケア、就労プログラムなど集団への参加を促し、社会技能の習得を支援することが大切である。また家族に対しては、家族会参加や心理教育など、本人と並行した援助、介入が必要であると考える。そのためには、多職種との連携を図りつつ幅広く持続的な看護を目指していくことが重要である。
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