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 アトラクションU
「日本の伝統文化『詩吟』に耳を傾けよう」
詩吟と心身の健康について

東峰灯吟舎東峰流本部
宗家 橋本東峰

はじめに
 私は、風邪をこじらせて中学時代肺を患ったことがあり、就職してからも年に数回は風邪のために高熱が出て、仕事を休むことがありました。詩吟を熱心に始めてから、いつの間にか風邪もあまりひくことがなく頑健になりました。勿論、詩吟をやったからといって誰もが無条件に健康に成るというものではないかも知れませんし、お薬を飲むように短期間に結果が見えるわけではありません。けれども科学、医学が高度に進んだ今では、詩吟が心身の健康に直結し、しかも効果が大であることが明らかに説明できるようになりました。
「詩吟」とは
 詩吟は、江戸幕府が漢詩教育に力をいれ、学問の補助として、また情操教育として漢詩に素朴な節を付けて歌わせたところ、これが好評で江戸中期ころには藩校や私塾でも盛んに詩吟が行われました。
 これがさまざまな変遷を経て、詩吟の本質である精神面を重視しながらも、今日では、邦楽として詩歌文学から受ける感激を、節調によって芸術的に表現するものとなっております。
○ 詩吟の素材は漢詩が主ですが、短歌(和歌)・俳句・新体詩(漢詩に対していう現代詩)なども吟じられます。これら詩歌の熟語を読み下したあとに、邦楽五音階(ミファラシド)で余韻(いわゆる節)を引くもので、ことばの音節を一つ一つ音階に乗せて表現する歌とは表現法が異なります。
○ そして、絶句(四行詩)を10回くらいの息継ぎで約2分かけて吟じますから、1分間の呼吸回数は約5回か6回と通常の三分の一で、ここが健康上の大きなポイントになります。
○『吟』には、うめく・うなる・どもる・なくとうような意味合いがありますが、理屈は別として実際の吟詠では体の芯からほとばしる声、つまり呼気圧が強く凝縮された密度が高い声で吟(演)ずるものですが、この技法も大きなポイントです。
詩吟の効果 <二つの側面>
 詩吟は詩歌を読む・余韻を引く(吟)という二つの側面を持っておりますので、そのように分けて説明いたします
詩歌の精神的作用
 『心身一如』といわれるように、心と体は相互に関連し、心(精神)は身体(肉体)の環境といえますから、不安な心の状態から平穏な心を回復できれば、体にとって良い環境に変わります。詩吟は心に共感を呼び起こし、その感動は『一吟天地の心・一吟洗心』という境地におかれるのです。

ア、詩歌の特質としては、つぎのように色々な見方があります。
詩には邪念がない。つまり、詩の本質は純粋な感情が自然に流露し、調和がとれている
。 ・詩は、喜怒哀楽の情や自然の風光に心うたれ、また、あるものの感興、心の中にある純粋な思いを叙述したものである。
・詩は絵画であり、絵画は一葉の響きを出す音楽であり、音楽は魂を吹き込まれた詩である。(ドイツの詩人の言葉ですが、波長の違いによって色や音となるので、その元は一つである)
・詩にはリズムがありリズムは人間をしてリズミカルにする、つまり風韻・風致をおびる。
・詩歌は、真善美の心の結晶である。

イ、詩歌の作用
 詩吟の多くは、他の人が詠んだ詩歌を吟じます。つまり、他人の文芸の中に吟ずる者の境地・詩境を開くのですが、結果としてつぎのような効果が得られます。
・言葉は心の表れですが、美しい言葉・優しい言葉は、言葉を発した一瞬において美しい心・優しい心に変わります。これが言葉のもつ不思議な力であり、真善美の心の結晶といわれる詩歌のもつ魅力です。詩吟は詩歌のことばを自分の心に写し取り、自分の心の発露として表現するものですから、情操に及ぼす影響は計り知れません。
・詩歌に共感をもって親しむうちに、その本質である美的なもの・教訓的なものなど、さまざまな詩歌の内容が顕在意識に阻まれることなく、知らず知らずのうちに潜在脳に達し、無条件に受容されることから情操が養われ、同時に人間としての正しい生き方を身につけていくわけです。
・シャーマンが、病人の治療のために伝えていたことばこそが『詩の起源(Eliade)』ともいわれますが、アメリカでは詩歌療法が成果を上げているそうです。
・詩は抑圧され・禁止された感情や欲求が投影され表現されたものであるから、患者の精神状態に応じて詩を読んだり書いたりすることで心が浄化し、抑圧からの開放反応を引き起させ、さらには慰撫的・支配的・鼓舞的・統制的・教訓的にも作用する。また、詩を通して自分の抱えている苦悩が他者にも有ることを知り、自分と他者を関係づけて心を分かち合うことが出来る効果があるということです。
吟の身(肉)体的作用

 詩吟が身体的、物理的に身体に及ぼす影響は、『呼吸』と『感動』ですが、色彩を感じ浴びることもだいじなことです。

ア 呼吸のはたらき。
○病気の多くは何らかの精神的な抑圧、長期間のいわゆるストレスが原因で自律神経の調和が崩れ、交感神経が優位にはたらいて副交感神経のはたらきが低下したために発病するといわれます。
 この自律神経に直接はたらきかけ、コントロールできるのは唯一呼吸である。息を吐く(呼気)のは副交感神経が、また、息を吸う(吸気)のは交感神経が受け持っているのですが、意識して息を長く強く吐くことによって副交感神経を刺激してそのはたらきを強め、自律神経のバランスを回復することが出来るということです。詩吟は呼気(息を吐く)が主となりますから、詩吟が健康によいという最大の根拠がここにあると思います。
○詩吟の呼気作用によって副交感神経が優位にはたらくと、リンパ球が増殖(福田・阿保理論)される結果、身体の免疫力が高まるので病気にかかりにくくなり、病気になっても回復が早いといわれます。このことも詩吟の効果として最大のものです。
○『活性酸素』の生体に及ぼす害が明らかになっていますが、呼吸回数が多い生きものよりも少ない生きもののほうが健康であるし、生体が老化するのも病気を引き起こすのも、その原因のほとんどは生体の酸化による結果といわれます。詩吟は1分間に5〜6回の呼吸ですから、これは『亀』の呼吸回数(3〜5回で、150〜180年の寿命)に近いものでこれも大きなポイントです。

イ 丹田呼吸による効果
 長呼気丹田呼吸による詩吟には、次のような効果があるとされております。
○胃や肝臓など内臓のマッサージ。
○下腹部を引き締めることで、自律神経を刺激し、腹腔に滞留する血液を心臓におくり血液の流れを良くし、血管も丈夫にする。
○心臓や肺臓、呼吸器官が丈夫になる。
  ○各種の筋肉群を刺激し、そのはたらきを強化する。
○血液を浄化する。
○気を練ること、つまり呼吸の上達は、気宇壮大にして浩然の気を養う。

ウ 詩歌を声に出して読むことの効果
 人間は本能として『しゃべる』生きものですから、詩歌をことばに出して読み下すこと自体が、脳神経を刺激し、また顔面などの筋力郡を鍛えるなど、大きなはたらきがあるそうです。
音楽療法の観点から
 西洋音楽(クラシック音楽)にみられる『ゆらぎ』効果が音楽療法の原点だと思いますが、民俗音楽の一つである詩吟は単調な五音階「ミファラシド」ですが、音楽の三要素(ハーモニー・メロディー・リズム・テンポ)はあるといわれます。
 邦楽(詩吟)は自然界と一体になり、音の響きばかりではなく、音と音の間に美意識を感じ、音を取り巻く自然音や雰囲気・情緒などが音楽美の一環として鑑賞されるもので、西洋音楽より包容力があるといわれ、あわれ(雅楽)・幽玄(能)・さび(尺八古典の曲)は、邦楽の三大美ですが、日本人の血であり心である邦楽は生命力を高め、心身の失調を回復させると言われます。一般的に音楽は「聴感覚を快適に向かわせ、不安な想念から外に目を向けることで自身の心を慰め、開放に導く」といわれますが、詩吟も同じことが言えると思います。
おわりに
 何事によらず感激、感動のないところに芸術も美もありません。しかし、詩吟300年余の伝統は大きな力がはたらいていると思います。最初は詩吟に共感が得られなくても、まず詩吟を始め継続することが最も大事なことで、徐々に感動を覚えわたしたちの生活に色々な面で潤いをもたらすことでしょう。
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